医師コラム

2022.11.08更新

みなさん、こんにちは。

 

前回は、採血のPSA検査で

前立腺がんが予測できるということについてお話しました。

採血で前立腺がんわかる?

 

今回は、PSA検査や直腸診などで前立腺がんが疑われた際、

確実にがんを診断する確定診断の方法、

前立腺針生検(はりせいけん)についてお話しします。

 

 

現在の医学において、エコー、CT、MRIなどの画像検査が発達とともに、

多くのがんが画像検査でみつかるようになりました。

しかし、それら画像検査は

あくまでがんを強く疑うという段階までの判断です。

 

最終的に、がんの確定診断は、

がんが疑われる組織を一部採取する「生検」と、

その生検で得た組織を顕微鏡で正常か悪性(がん)かを

専門の病理医によって判断する「病理診断」によって行われます。

 

実際、前立腺がんの診断にMRI検査が有用とされていますが、

MRIで診断できない前立腺がんも多く存在します。

われわれ泌尿器科医は、PSA値や直腸診などを含めて

複合的に前立腺がんが疑われた場合、

前立腺生検を行い前立腺がんの確定診断をします。

 

 

具体的な前立腺針生検の方法を解説します。


前立腺は肛門から指を入れると、お腹側に触れる部位に存在します。

生検1

 

 

前立腺がんの大きさや進行度によっては、

この直腸診により硬いがんを触れることもあります。


針生検は、肛門からエコーで前立腺を確認しながら、

直腸(お尻の穴の奥)、もしくは会陰(えいん、肛門と陰のうの間の皮膚)から

穴のあいた特殊な針をさして、針の中に組織を採取してきます。

 

生検2

 

 

みなさんがもっとも心配されるのは、生検時の痛みでしょう。

施設によっては、痛み止めのゼリーだけを使用して生検を行っていたため、

肛門の痛みを感じる方も一定数おりました。

 

当院では、2022年12月から経会陰的前立腺針生検を行いますが、

腰椎麻酔でしっかり痛みを取り除いた状態で生検を予定していますので、

ご安心いただけると思います。

 


麻酔のあと、生検は約10-20か所採取するのですが、

時間は10-20分程度で終了します。

 

生検の合併症ですが、一番多いものは出血で、

尿、精液、便に血が混じるというものですが、

数日から1か月程度で徐々におさまります。

 

他に、尿が出なくなる(尿閉:にょうへい)や発熱があげられます。

発熱は前立腺に菌が入り、急性前立腺炎となることが原因です。

多くは予防的な抗生物質で発症を予防できますが、

1-3%程度の割合で全身に菌が回る

敗血症(はいけつしょう)という重篤な感染症になる危険があり、

その場合は入院での抗生物質治療が必要になり、注意が必要です。


当院では、直腸からの生検よりも

こうした感染のリスクが低いとされている会陰からの生検を行います。


こうした発熱や尿閉がなければ、検査当日から通常の生活は可能で、

当院では日帰り生検を実施します。


約2-3週で生検結果はわかりますので、次回の外来で結果をお話しいたします。

 

 

このように、PSA検査で異常値であった場合、

前立腺針生検という精密検査が行われますが、

ご安心して検査をうけていただければと思います。

 

 

 

2022.08.02更新

 

みなさん、こんにちは。

前立腺がんが採血でわかるってご存じですか?

 

前回は男性で最も多い前立腺がんについてお話しましたが、

50歳以上の男性でもっとも多い前立腺がん

 今回はPSA(ピー・エス・エー)採血で

前立腺がんを診断がある程度可能であることをご説明します。

 

PSA検査で前立腺がん検診を

 

 

 

PSAは前立腺特異抗原(prostate specific antigen)というもので、

前立腺で産生されるタンパク質です。

前立腺がんでは、がん細胞自体がPSAを産生したり、正常前立腺組織を壊したりするため、

PSAが上昇すると考えられています。

 

前立腺がんの精密検査が必要と判断されるPSAの基準値は4.0 ng/mlとされています。

実際、下記グラフからわかるように、

基準値が4.0以上で前立腺がんの発見率が上昇します。

 

PSA検診

 *公益財団法人前立腺研究財団 「PSA検診 受診の手引き」(2017年版)より

 

 

この採血によるPSA検診ですが、多くの自治体の住民健診で実施されており、

2015年には全国約80%の自治体で行われております。

*公益財団法人前立腺研究財団 前立腺がん検診市町村別実施状況より

 

実際、当院近隣地域におけるPSA検診ですが、松戸市や我孫子市では行われているものの、

2022年現在、わが柏市ではPSA検診は実施されておりません

柏市の50歳以上の男性のみなさま、

是非一度は、PSA検診をお受けになることをお勧めいたします。

 

実際にPSAが4以上であった場合には、

前立腺針生検という前立腺の組織を採取する検査が必要になります。

当院では慈恵大柏病院と連携しており、慈恵医大では一泊二日で行う検査ですが、

今後当院で日帰り生検も実施する予定です。

 

前立腺がんのPSA検診について

 

またPSA値は加齢とともに上昇する傾向があるため、

年齢により基準値を決めるという「年齢階層別PSA」という考え方があり、

50歳~64歳 は3.0ng/ml、65歳~69歳では3.5ng/ml、

70歳以上は4.0ng/mlも推奨されています。

すなわち、70歳よりも若い方ではPSAが4以下でも注意が必要な場合があることになります。

 

したがって泌尿器科医は、必ずしも4.0という値だけではなく、

年齢、エコーでの前立腺所見、前立腺の大きさ、直腸診での前立腺の硬さ、

PSAの経時的変化、MRI所見などを考慮しながら、

精密検査である組織検査の必要性を検討します。

 


次回は、前立腺癌の治療(概論)について説明します。



2022.06.27更新

みなさん、前立腺がんが増えていることをご存じでしょうか。


現在、日本人の2人に1人ががんにかかり、3人に1人ががんでなくなると言われています。
そのなかで、男性のがんである、前立腺がんが急増しています。

 


日本において1年間に新たに前立腺がんと診断された患者さんの数(罹患数といいます)
において、

1980年は3,944人でしたが、30年後の2010年には64,934人と16倍以上に増加しています 1) 。

部位別がん罹患数

 

 

2018年では、日本人男性がかかるがんの第1位となり、

約9人に1人の男性が前立腺がんにかかるとされています 1) 。

 

前立腺がんは9人に1人

 

 

とくに50歳をこえると、罹患率は急激に高まるため、

50歳以上の男性には注意をしていただきたい病気です。

 

 


前立腺がんになる原因は分かっていませんが、もともと欧米では男性に最も多いがんとさ
れ、

日本人が肉やチーズなどの動物性脂肪の摂取が増えたことなど生活習慣の変化が要因
の一つとされています。

 

前立腺がんの特徴

 


前立腺がんは、ゆっくり進行するタイプのがんとして知られており、

がんがみつかった状態に応じて、さまざまな治療法を選択することができます。

ただし、どのようながんでも早期発見、早期治療が有用であることには変わりなく、

前立腺がんでも定期的な前立腺検診をうけることが重要です。


特に50歳以上の男性では、前立腺がんの腫瘍マーカーであるPSA採血を受けることが大切
です。

 


次回は、前立腺検診であるPSA検査について解説します。


引用
1) 国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」(全国がん登録)

 

 

医師 三木淳

 

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